従業員満足度と従業員エンゲージメントとは?

従業員満足度と従業員エンゲージメントとは?

従業員満足度とは、従業員が自分の仕事に対して得られる機会やサービスへ抱く態度を指します。与える側が提供するものよりも少ない待遇しか得られない場合、不満が生じますが、これは受け手側も同じです。そのため、従業員の満足度を実現するには、公正な対価を支払うことが不可欠です。一方、従業員ロイヤルティ(エンゲージメント)は、従業員の価値観と企業のコアバリューとの調和によって生まれる感情を指します。

企業の効率を大きく向上させるカギは従業員満足度にあります。従業員満足度でまず重要な要素として挙げられるのは「時間」です。企業が従業員の満足度のために行う施策は継続的である必要があります。なぜなら、一度の行動だけで得られるものではなく、絶えず注意を払い続けるプロセスだからです。よく考えられず一時的に行われた施策はすぐに従業員に対する効果が薄れてしまいます。日常生活でも同様で、非常に良い一日があったあとに悪い出来事が起これば、その良い一日の印象はかき消されてしまいます。企業も従業員満足度を高める取り組みでは、これを念頭に置く必要があります。

もう一つの重要な要素は「主観性」です。すべての従業員が同じ要求をするわけではなく、同じ要因で不満を抱くわけでもありません。人によって期待は異なります。企業では、人事部門が個別に従業員の声を聞き、何を求めているのかを把握した上で従業員満足度の向上策を実行すべきです。従業員のニーズを推測のみで満たそうとしても、かえって逆効果を生み出し、不満が高まる場合もあります。

 

従業員満足度はどのように得られる?

従業員は企業の業務を方向づける重要な構成要素です。そのため、彼らの満足や不満を率直に尋ねることが大切です。そうすることで信頼関係と健全なコミュニケーション基盤を築くことができます。従業員満足度は金銭的な報酬だけで達成されるものではありません。ここを誤って認識している場合が多いのです。従業員を喜ばせるためには、社会生活に影響するような機会を与えたり、キャリア形成につながる研修を提供するなど、さまざまなアプローチが考えられます。より長期的な高いモチベーションと満足度を目指すのであれば、すぐに目に見える効果が出ないような方法を実施することが求められます。一時しのぎの解決策は、結局一時的なプラス効果しか得られません。短期的なモチベーション向上にだけ焦点を当てた施策は、従業員の信頼や忠誠心をむしろ低下させる可能性があります。企業は従業員満足度が不変ではなく動的な構造であることを認識すべきです。

従業員満足度を高める第一歩は、従業員が何を望み、どんな期待を持っているかを尋ねることです。これは人事部門だけの責任のように見えますが、部長やマネージャーといった現場を管理する立場の人々にも大きな責任があります。人事部門はこのプロセスをサポートする役割を担います。従業員への調査から得られた期待レポートをまとめ、人事部門が主体となってアクションを起こしていくことで、従業員満足度の向上につながります。

 

従業員満足度を高める6つの基本的な方法

 

1- 従業員に「大切にされている」と感じさせる

企業は従業員に対して「あなたは大切な存在だ」と感じさせる必要があります。「知っている」と「感じている」は大きく異なります。従業員が自分が大事にされていると実感すれば、より良い成果を出そうと努力します。企業側が従業員に価値を感じさせる方法はさまざまです。例えば、意見を求めることで従業員の考えが尊重されていると感じさせたり、価値を生み出した従業員を称賛し、モチベーションを保ったまま組織に貢献してもらうことが考えられます。

逆に、自分が評価されていないと感じる従業員は会社への愛着が薄れ、生産性や成果の質も下がります。そのため、企業は従業員に対して必要な配慮やサポートを行い、彼らの貢献度を認識していることを示すことが重要です。

 

2- 従業員と透明でオープンなコミュニケーションを行う

透明でオープンなコミュニケーションは、人間関係を円滑にし、親密さを深め、業務を効果的に進めるために重要です。会社内で進行中または予定の仕事について、良い点も悪い点も含めて率直に意見や要望を共有することにより、従業員の行動指針が明確になります。自分のやるべきことが把握できない従業員はミスを起こしやすく、これは本人のモチベーションを下げるだけでなく、従業員満足度も低下させます。従業員と会社の信頼関係を強固にするためには、批評は建設的に行い、要望を明確に伝え、評価を透明性のある形で提示することが大切です。

他の例えで言えば、従業員はヨットで、経営者は風のようなものです。風が穏やかで優しく、方向がはっきりしているほど、ヨットは安心して進めます。しかし、風が不規則で強いと、ヨットは大きく揺れ動きます。つまり、健全なコミュニケーションによって会社と従業員の間で誤解が生じにくくなり、それに起因するネガティブな結果を防ぐことができます。また、従業員のモチベーションを維持し、仕事の価値を高める効果もあります。

 

3- 従業員の声に耳を傾け、行動を起こす

社員の希望や期待を把握するために、定期的に従業員満足度調査を実施することが望ましいです。従業員に何が欲しいかを尋ねなければ、答えを得ることはほぼ不可能です。大人数の会社で従業員満足度調査を行うと、多種多様な要望や期待が出てくる可能性があります。その中には大多数が必要とするものだけでなく、少数あるいは個人の特別な要望も含まれます。一部の要望がある側面で価値を創出しても、別の側面では逆効果になる場合もあります。そのため、企業はこれらすべての要望を総合的に検討し、実行可能なものを実施すべきです。会社が従業員満足度調査を行いながら何もしなければ、現状の不満がさらに募り、従業員の信頼を損ねる結果となります。

従業員満足度調査を匿名で行う場合、従業員はより率直に回答でき、会社の問題点を明確に示すことができます。その結果に基づいて戦略や施策を策定し、実行に移せば、従業員の満足度も高まりやすくなります。

 

4- 従業員ロイヤルティ(エンゲージメント)を高める取り組みを行う

従業員ロイヤルティは、従業員が会社に対して付加価値をもたらす意欲を具体化した要素です。企業の目標と従業員の目標が一致するほど、ロイヤルティは高まります。ロイヤルティは人間が「ベストを尽くしたい」という本能的な欲求と繋がっているため、従業員が自社に強い愛着を持てば、会社に対する貢献度も最大化されます。従業員満足度が日々変動しうるのに対し、従業員ロイヤルティは比較的長期的な時間軸で形成される点が特徴と言えます。今日は満足していても明日はそうでないかもしれませんが、ロイヤルティの上昇や低下は時間の経過を伴うプロセスです。そのため、企業は長期的に業務の質を維持し、従業員満足度を持続的に高めるためにも、ロイヤルティ向上を目指す施策を取る必要があります。

 

5- 公平かつ原則に基づいた人事管理を行う

公正さは従業員の信頼感を育むだけでなく、業務遂行における責任意識の向上にもつながります。ある従業員が低い給与に対しては必ずしも不満を抱かなくても、不当な扱いを受けたと感じる場面では強い反発を抱く可能性があります。つまり、従業員は自らを守る本能として「不当な扱い」に特に敏感です。もし労力に見合う金銭的改善がなく、自らの努力が評価されないと感じれば、企業の不公正さに不満を覚えて離れてしまうでしょう。したがって、企業の原則や公平性に基づいた制度をつくり、社員にその姿勢を示すことが必要です。従業員の良い働きや努力、そして協調性を正当に評価し、その分の配慮を行うことが重要です。いかなる企業にも一定の理念や原則がありますが、それを遵守しなければ従業員満足度も企業への尊重も下がってしまうでしょう。人事管理では、それらの原則を基に、公正な経営を提供することを心掛ける必要があります。

 

従業員エンゲージメントとは?

従業員ロイヤルティ(エンゲージメント)とは、従業員個人の価値観と企業のコアバリューが一致することで生まれる感情をいいます。エンゲージメントは勤務期間の長さを示すものではありません。従業員が企業のためにどれだけ価値を生み出したいか、つまり従業員の献身度合いがエンゲージメントの最も重要な要素です。従業員が積極的にイニシアチブを取り、自由に意見を言い、企業が従業員のアイデアやフィードバックを取り入れ、常に改善を続ける環境があるとすれば、その企業には高い従業員エンゲージメントがあると言えます。

さらに重要な指標として、従業員が自分の友人や知人に自社を勧めるかどうかがあります。従業員が自社を「信頼できる職場」として親しい人に紹介したいと思うならば、そこには高いエンゲージメントがあると考えられます。

 

従業員満足度と従業員エンゲージメントの違いは?

従業員満足度は時間とともに大きく変化する可能性があります。たとえば、一週間前には非常に満足していた従業員が、翌週には不満を抱くようになることも珍しくありません。満足度は感情と密接に関連しており、変動しやすいという特徴があります。一方、従業員エンゲージメント(ロイヤルティ)は、より長期的なスパンで形成されるため、一度根付くと急激に消失することはあまりありません。満足度は変わりやすいので、定期的に金銭的・精神的なケアが必要となりますが、エンゲージメントは金銭的報酬だけでは得られない、より価値観や感情的な要素が中心です。

実は従業員エンゲージメントと従業員満足度は同時に存在する場合もあれば、片方のみ高いこともあります。たとえば、不満があっても会社のビジョンや価値観に共感しているために、長期間勤め続ける従業員も存在します。これは金銭面などの具体的なリターンというよりも、企業の持つ抽象的な理念やミッションに魅力を感じているからこそ成り立つ態度です。エンゲージメントは従業員エンゲージメント調査で、満足度は従業員満足度調査で測定されます。

つまり、従業員ロイヤルティ(エンゲージメント)と満足度は一見似ているようで、実際は異なる概念です。企業が業務の質を高めるには、両方を共に高い水準に保つ必要があります。どちらか一方が欠けると、仕事の質や従業員の幸福度が下がることになります。従業員がより満足し、かつ企業に強いコミットメントを持つほど、企業に対して大きな価値を創り出し、自身も成長していきます。

 

従業員エンゲージメントの重要性

従業員エンゲージメントが高い企業では、離職率(従業員の入れ替わり率)が低い傾向にあります。これは企業が保有するノウハウが失われにくく、むしろ蓄積され続けることを意味します。逆にエンゲージメントが低い企業では離職率が高く、新たに入社した人が業務や環境に慣れるまでの間、生産性が低下してしまうため、業績にも影響を与えます。また、頻繁な入れ替わりは他の従業員にも悪影響を及ぼす可能性があります。一方、エンゲージメントが高く、離職率が低い企業は、ノウハウが効果的かつ迅速に蓄積され、情報の損失も最小限に抑えられます。

エンゲージメントが高い従業員は、自ら進んで意見やアイデアを提案し、ベストを尽くすと同時に、必要に応じて追加の責任を引き受けることをいといません。その結果、本人だけでなく、チームや会社全体の成長に貢献してくれます。

 

従業員エンゲージメントを高めるには?

従業員エンゲージメントの主な要因には、企業ビジョンや企業文化、管理者の公正さと中立性、そして従業員への価値提供などが挙げられます。それでは、エンゲージメントを高めるには具体的にどのような取り組みが必要なのでしょうか。以下に、従業員エンゲージメントを高める方法をいくつかご紹介します。

 

社内コミュニケーションを強化する

職場だけでなく、プライベートでも同僚をよく知るように努めましょう。従業員を深く理解していれば、精神的なサポートが必要なときに最適な支援を提供できます。休憩時間やミーティングの冒頭でちょっとした会話を交わすだけでも、従業員のことを知る良いきっかけになります。こうしたやり取りは、企業のビジョンや文化を従業員に直接伝える機会にもなります。

誕生日や記念日などの特別な日を祝ったり、仕事以外の状況(たとえば、従業員が親になった時や親族を失った時など)でその喜びや悲しみを共有することも、社内コミュニケーションを強化する大きな要素となります。コミュニケーションが強い会社では、従業員エンゲージメントも自然と高まりやすいです。

 

意思決定プロセスに従業員を参加させる

会社で何かを変更しようとする場合には、その前に従業員に状況を共有すべきです。従業員の意見を慎重に聞き、必要に応じてフィードバックを行い、ミーティングの終わりには感謝を伝えましょう。彼らのアイデアを採用する、または採用できなくても理由をしっかりと説明することは、従業員の会社へのロイヤルティを高めることにつながります。

 

従業員を称賛する

私たちは誰しも、自分のした仕事が他者に認められると嬉しく感じるものです。従業員が何か成果を上げたときには、その仕事を高く評価してあげることで、会社への結びつきがより強くなります。

 

えこひいきしない

従業員は、公平で透明性が高く、平等な環境で働くときに、より安心感と安定感を得られます。人生のあらゆる場面と同様に、職場でも意見の相違や小さな衝突は起こり得ます。これを解決するのは管理者の役割です。その際、管理者は双方を傷つけず、中立かつ公正に対応する必要があります。こうした態度が従業員からの信頼と職場へのロイヤルティを維持することにつながります。

公平性や中立性は、意見の衝突時だけでなく、昇進やボーナス、権限付与などあらゆる場面で徹底し、疑いの余地を残さない対応をすることが重要です。

 

不明確な状態を放置しない

人は本能的に先が見えない状況を恐れ、何が起こるか分からない「不確実性」はストレスを高めます。ストレス下の従業員が職場や仕事に満足し、さらにエンゲージメントを感じることは難しいでしょう。したがって、職場で発生するあらゆる不確実性は早期に解消すべきです。特に役割の範囲や業務プロセス、組織構造などに曖昧さがあってはなりません。

 

職場への帰属意識を高める

エンゲージメントを高めるための最初の条件は、従業員が自分自身をその会社の一部と感じることです。同僚との社外アクティビティや食事会、レクリエーション、定期的なパーティーなどを開催することで、従業員の帰属意識を向上させることができます。たとえば、週に一度、数時間のチーム対抗ゲームを行ったり、オフィスに卓球台を置いて楽しんだり、スポーツイベントを企画することも検討できます。

 

従業員エンゲージメントを継続的にモニタリングする

社内で常に従業員のエンゲージメントを観察し、それがどのような状況で高まり、どのようなときに落ちるのか、従業員がどのように反応するのかを把握して、その結果に基づいて将来的な施策を検討しましょう。

従業員エンゲージメントを観察するポイントとしては、

従業員のモチベーション

従業員の主体性(イニシアチブ)

従業員からの提案や意見

などが挙げられます。

 

他社の事例から学ぶ

従業員エンゲージメントは、現代のビジネスにおいて非常に重要なテーマです。御社で従業員エンゲージメント施策を始め、エンゲージメント度合いを測定して、従業員が自社をどのように捉えているかを把握するため、そして従業員満足度と雇用主ブランド分析を行うために、ぜひお問い合わせください。

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